2022.01.11
2025.03.12 更新

安全キャビネットとは?クラス分類ごとの特徴とクリーンベンチとの違い

「安全キャビネット」とはいったいどんな設備のことを指すのか、「クリーンベンチ」との違いは何なのか、そういったお問い合わせをいただくことが頻繁にあります。 そこで、本コラムでは安全キャビネットの分類ごとの特徴と、クリーンベンチとの違いについて解説します。 参考にしていただければ、環境にあった排気装置適切な設備を選べるようになるはずです。

安全キャビネットとは?

「安全キャビネット」とは、ウイルスや細菌、検体等の感染性物質、遺伝子組み換え生物等を封じ込め、作業者と環境を生物学的汚染から守るための装置です。たとえばウイルスや細菌が作業をする空間に蔓延してしまった場合、作業者に感染するかもしれません。また、試料に空気中の異物が混入することや、遺伝子組み換え生物が環境中へリークしてしまうことも考えられるでしょう。安全キャビネットを導入すると、感染の原因となるウイルスや細菌、遺伝子組み換え生物を作業空間である庫内に封じ込めることが可能です。

そのため、ライフサイエンス部門にて頻繁に利用される装置です。

いくつかのタイプがありますが、いずれも『生物材料への対策を講じる』という点で共通しています。

安全キャビネットとクリーンベンチの違い

2つの設備は仕組みが似ているため、どちらを導入すべきか迷う方も少なくありません。
そこで両者の違いについて、以下の表でまとめてみました。

 

 

安全キャビネット

クリーンベンチ

保護の対象

作業者・環境・試料

異物混入防止

気流

庫内の空気を封じ込め、HEPAフィルターを通して浄化して室内に循環する。

HEPAフィルターを通して浄化したで庫内を満たし、作業面(サッシ面)から空気を排出する。

 

2つの設備の違いは、保護の対象と気流にあります。それではそれぞれの点についてどのように違うのか、具体的に見ていきましょう。

保護の対象の違いについて

両者には保護の対象において違いがあります。安全キャビネットはライフサイエンス分野で頻繁に使用される装置です。感染性微生物のばく露から作業者を守ることと、作業面を通過した空気清浄化して室内の空気環境汚染を防ぐことを重視します。細胞培養等を行う場合には、併せて試料が汚染されないことも重要です。対してクリーンベンチは、空気中の異物が混じることの防止の役割に特化した装置です。

保護をしたい対象にあわせて装置を選ぶと、それぞれのニーズにあった使い分けができると考えられます。

気流の違いについて

気流の違いも、2つの設備の違いのひとつです。安全キャビネットでは庫内の空気を作業面前面のエアーホイルと作業面後面のスリット部分から吸引し、空気が庫外に漏出することを防ぎぐ仕組みです(後述するA2タイプの場合には、HEPAフィルターでろ過された空気が作業エリアへ送られます)。

一方で、クリーンベンチではHEPAフィルターによって清浄化された空気が、キャビネット内上部から吹き出し、作業エリアを通過して作業面(サッシ面)から排出されます。庫内を陰圧にして空気を引き込むか、庫内を陽圧にして空気を押し出すか、この点が主な違いといえます。

安全キャビネットの種類

安全キャビネットは3つのクラスに分類されており、さらにタイプによって細分化されるクラスもあります。それぞれのクラス・タイプによって特徴が変わるので、安全キャビネットを導入する前に特徴について知っておきましょう。

クラスⅠ

安全キャビネットクラスⅠ

クラスIは「換気型」の安全キャビネットです。前面にある開口部から空気を取り入れ、HEPAフィルターで空気を浄化することで汚染物質が空気中に排出されないようにすることが役割となります。作業環境内の空気中に漂う感染性のウイルスや細菌を取り込み、感染リスクを低減することが特徴です。作業者の安全も確保できるでしょう。しかし、庫内を完全な無菌状態にはできません。また試料の汚染を遠ざけることもできず、病理研究・遺伝子組換え生物の研究を行う場には適していないと言えるでしょう。

クラスⅡ

クラスIIの安全キャビネットは、作業者、環境、試料を保護するために適した最もスタンダードなタイプです。感染性微生物を取り扱うや、細胞培養、無菌調剤等の作業の際に活用できます。

基本的にはクラスIと同じく「換気型」ですが、クリーンベンチと同様に庫内上部からHEPAフィルターで浄化された空気が噴き出すため、庫内を清浄な状態に保てる点がクラスIとの違いです。そのため、キャビネット内への異物が混じることも防止できます。

クラスIIはタイプごとにさらに4つの種類に分類されます。それぞれの分類ごとの特徴についてさらに詳しく見ていきましょう。

タイプA1

クラスIIの中の「タイプA1」は、平均流入風速が0.38m/s(75fpm)以上を維持していることが特徴です。生物材料もしくは不揮発性有害物質を取り扱う際に適しています。HEPAフィルターでろ過された空気を屋内に循環、もしくはキャノピーを接続して外部へと排気するかのいずれかとなる仕組みです。 揮発性の有害化学物質や放射性核種を扱う場合には適していません。また、危険な調剤をする際の無菌操作では、そのほかの安全キャビネットを選択したほうが安全性は高まるでしょう。

タイプA2

安全キャビネットクラスⅡタイプA1A2

続いての「タイプA2」は、平均流入風速が0.51m/s(100fpm)以上が維持されるタイプの安全キャビネットです。仕組みはA1と似ており、フィルターでろ過した空気を循環させるか、もしくはキャノピーによる外部排気を行います。HEPAフィルターを用いることも同じです。 適している環境は生物材料、不揮発性の有害物質を用いる場合です。また、有害化学物質処理が施されたバイオ試料を扱う場合にも適しています。さらに放射性核種トレーサーも扱えます。ただし吹き出し空気を循環させても支障がない場合に限られるため、状況にあわせた導入が必要です。

タイプB1

クラスIIの中の「タイプB1」でも、平均流入風速が0.51m/s 100fpm)以上が維持されます。タイプA2での平均流入風速は同じでした。両者の違いはタイプB1では、不純物が混じった空気の大部分が外部に排気されることです。

タイプA2では、タイプA1と同様に空気を循環させる仕組みがあります。しかし、タイプB1では空気の大部分が外部へと排気されます。そのため微量化学物質や、トレーサー量の放射性核種で処理された試料を安全に扱えることが違いです。直接排気エリアがあり、吹き出し空気に循環されない化学物質や放射性核種を含む作業にも適しています。

タイプB2

安全キャビネットクラスⅡタイプB1B2

クラスIIの『タイプB2』では、平均流入風速が0.51m/s(100fpm)以上に維持されます。タイプA2やタイプB1との違いは、すべての空気が外部に排気されることです。そのため、『全排気型』や『100%排気型』と呼ばれることがあります。 不純物が混じった空気はすべてが外部に排出されるため、作業室内が汚染される確率は大幅に下がります。 【適するシーン】

  • バイオ試料
  • 揮発性有害物質
  • 化学物質
  • 放射性核種

これらを取り扱うエリアでも安全性を確保しやすくなります。

クラスⅢ

クラスIIIの安全キャビネットは、換気式であり、完全に密閉されていることが最大の特徴です。開口部がないため閉鎖されていて、不純物が混じった空気が外部に漏れ出しません。作業者は、漏れが生じない密閉空間でグローブを装着し、作業を行います。

そのため、操作性は高くありませんが、安全性は安全キャビネットの中で最も信頼性が高いと評価されています。一種病原体など、危険性の高い試料にも対応できます。バイオセーフティーレベルの高い封じ込めを必要とする作業も安全に実施可能。危険度の高い感染性生物を取り扱う際には、クラスIIIが最も適しているでしょう。

*日本国内では、日本産業規格「JIS K 3800:2009」が「バイオハザード対策用クラスIIキャビネット」の規格として定められています。上記したNSF規格を基に制定されていますが、一部技術的内容が変更されています。
JIS K 3800が規定するクラスⅡキャビネットの分類を以下に紹介します。

タイプA1 タイプA2 タイプB1 タイプB2
使用目的 生物材料及び不揮発性有害物質の取扱い(少量の揮発性物質・ガスの取扱いを含む) 生物材料及び相当量の揮発性有害物質の取扱い
排気 室内排気(少量の揮発性有害物質・ガスの使用には開放式接続ダクトによる室外排気) 密閉式接続ダクトによる室外排気
循環気率 約70% 約70% 約50% 0%
平均流入風速 0.40m/s以上 0.50m/s以上

※上記の表はJIS規格の一部項目のみを記載しています。規格の全内容については、日本産業規格の原本をご確認ください。

安全キャビネットは分類ごとの特徴を踏まえて

この記事を通じて、安全キャビネットについての理解が深まったのではないでしょうか。 安全キャビネットは分類ごとに特徴が異なります。 それぞれの特徴を把握し、ニーズに合ったものを選びましょう。 オリエンタル技研ではメンテナンスまでお任せいただける安全キャビネットをご用意しております。 国内生産のため、トラブルが発生した際には当社認定作業員が対応し、常に安全な環境を維持できます。 目的に合った製品をご提案いたしますので、 安全キャビネットの導入をご検討されているなら、ぜひ一度ご相談ください。

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