大喜利という演芸を通して
「超高齢化社会を楽しく生きる」について考える
「研究者大喜利 #12 〜 超高齢社会を楽しく生きる!編」を開催
2023年8月23日、オリエンタル技研工業のブランド体験スペース「X/S(イクシーズ)」にて、研究者コミュニティであるアークレブ・アカデミア・ストラテジスト・ネットワーク(AASN)が主催する「研究者大喜利 #12 〜 超高齢社会を楽しく生きる!編」がオンラインとオフラインのハイブリッドイベントとして開催されました。
研究者大喜利とは;
研究者の面白さ、研究の楽しさ、研究がいかに新しい社会を作り上げていくパワーを持っているのかを多くの方々にお伝えするために、研究者コミュニティであるAASNの研究者らが中心となり企画している大人気シリーズ。毎回SDGsに関連する社会課題をテーマに、異なる分野の研究者らと視聴者が"大喜利形式"で議論を深め、新たなアイデア・価値観を創出します。
「X/S(イクシーズ)」での開催は、約半年前に行われた「研究者大喜利 番外編 〜 研究室で研究機材に囲まれて、研究の未来を語ろう!編」に引き続き2回目。
前回の模様はこちら
コラム"SDGsチャレンジ:大喜利という演芸を通して「未来の研究環境」について考える"
今回は医学の分野はもちろん、AI、データサイエンス、量子科学、神経科学、腸内細菌、法律など研究者大喜利史上最もバラエティー豊かな専門家の方々が集結し、「超高齢社会」を生きるうえで私たちが持つべき考え方や楽しく生きる術についての多種多様な意見やアイデアが次々と飛び出しました。
「超高齢社会」 と「未病」
今回の研究者大喜利は、東京大学大学院工学系研究科、医学系研究科の教授であり、神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科長も務める鄭 雄一氏によるキーノートスピーチ『「超高齢社会」とは?』から幕を開けました。
今年4月に行われた総務省の発表によると、昨年10月1日時点での65歳以上の割合は過去最高の29.0%となっており、30年後の2050年には約36%が高齢者になると予測されています。
鄭氏が「超高齢社会」を乗り越えるうえでその必要性を強調されたのは、健康・病気観の転換です。
現在は、心身の状態を病気か健康かの二元論で捉えがちですが、これからは「健康」と「病気」の間をグラデーション的に変化する「未病」として捉え、
個々人が主体的に自身の健康状態に向き合い、何をして何をしないかの選択を下すことが重要になってくると言います。
そのうえで、「科学技術の発展」、「社会システムの変革」、「個々人のリテラシーの向上」の3つが非常に大きなポイントとなってくるとおっしゃられていました。
「超高齢社会」を楽しく生きるために
【大喜利スト & コメンテーター】
●[バイオマテリアル属性] 鄭 雄一氏 / 東京大学大学院工学系研究科 & 医学系研究科 教授、神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科長
●[研究者大喜利 #6 チャンピオン / 恋愛脳属性] 金子 萌氏 / 株式会社想ひ人 代表取締役
●[脳科学属性] 揚妻 正和氏 / 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 主任研究員&生理学研究所 准教授(兼任)
●[社会実装属性] 金 剛洙氏 / 株式会社松尾研究所 取締役 経営戦略本部ディレクター
●[電子属性] 植田 暁子氏 / 産業技術総合研究所
●[菌属性] 菅沼 名津季氏 / 株式会社bacterico 代表取締役
●[胎盤属性] 橋本 彩子氏 / 日本赤十字社医療センター 産婦人科
●[歩く好奇心属性] 小久保 智淳氏 / 慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程3年・研究員
●[AI属性] 野澤 拓磨氏 / 株式会社アークレブ アソシエイト
●<モデレーター> [海洋生物属性] 藤瀬 里紗氏 / 慶應義塾大学 理工学部 特任助教 & CIC Japan Project Lead
異分野の視点や知識を掛け合わせることで思いもよらないアイデアが生まれるのが魅力の研究者大喜利。今回も多種多様なバックグラウンドを持った上記10名の方々が次の2つのお題に挑みました。
①みんなが思う「超高齢社会」ってどんな世界?どんなことが問題になってくるだろう?
②「超高齢社会」を楽しく生きるために必要なツールって何?
その際、インタラクティブなコミュニケーションを活性化する手段として、チャットアプリが活用され、視聴者の方々の意見・アイデアも随時取り入れながら議論は展開していきました。2つ目のお題で出たアイデアの一部をトピック形式でご紹介します。
・ずぼらな人でも続けられる健康管理術について
・病気の0次予防に役立つ街づくりについて
・高度にパーソナライズされた健康データ・アドバイスを提供してくれるChatGPTについて
・年齢や見た目といった物理的属性から解放されるメタバース空間の可能性とそこで得る仲間・コミュニティの重要性について
・ニューロテクノロジーの発展による身体性のない世界の誕生について
今回も様々な角度から次々に魅力的なアイデアが湧き出ましたが、中でも参加者の方々が特に注目して議論されていたのが、高度に発達した技術をいかに取り入れるかという点でした。
理想の高齢社会とは?
イベント終盤、科学技術の更なる進歩と社会システムの変革により、もしあらゆる健康データが高精度にパーソナライズされ、「より良い生き方」が提示される社会になったとき、
私たちは本当に幸せなのかという投げかけにがあった際には、皆さん深く考え込む姿が印象的でした。
また、『理想の高齢社会とは、老いや身体的制約の影響で選択肢や可能性が縮減されてしまうことなく、より良い生を送れるようひとりひとりに幅広い選択肢を提示し、全ての個人にその選択権がある社会なのかもしれない。』というお話には、健康や幸せについて改めて考え直す機会をいただくことができました。
今回の研究者大喜利もたくさんのことを考えるきっかけになる素晴らしいプログラムとなりました。
私たちはこのプロジェクトを通して、3つのSDGs目標達成に貢献します
すべての人が健康的で幸せな日々を送ることに寄与する科学技術の発展に貢献します
科学の面白さや魅力を気軽に感じられるイベントや企画への参加、情報発信を通して、科学をもっと身近な存在にすることに貢献します。
様々なバックグラウンドを持った人々が集まり、研究の未来について意見を出し合うことで、新たな研究環境の創出に貢献します。
私たちはこれ以外にも、SDGsの目標を達成するために様々な取り組みを行っています。