安全管理者必見!「特定化学物質障害予防規則」徹底解説
様々な有害物質を多く取り扱うラボにおいては、各物質の特性を理解し、法令に定められる適切な安全対策を講じる必要があります。がん等の健康障害や大量漏洩による急性中毒を引き起こす物質は「特定化学物質」として、適切な対策と厳しい管理が求められています。"安全管理者必見!「有機溶剤中毒予防規則」徹底解説 "に続き、本コラムでは、特定化学物質の安全基準を定めた特定化学物質障害予防規則(以下、「特化則」)を詳細に解説しています。ラボのコンプライアンスチェックにぜひご活用ください。
特化則とは
特化則では、対象物質が製造に許可が必要な「第1類物質」、製造または取り扱いに発散源対策が必要な「第2類物質」、大量漏洩を防止する措置が求められる「第3類物質」に大別されます。以下の表に、使用する物質に応じた代表的な実施措置をまとめました。(細かい分類により求められる措置が異なる場合があるためご注意ください)詳細は下記のメニューよりご確認ください。
使用物質 | 発散源対策 | 代表的な設備 | 健康安全対策 |
---|---|---|---|
第1類物質 (原則右のいずれかの 発散源対策が必要です) |
発散源の密閉 | グローブボックス |
作業環境測定の実施 健康診断の実施 洗浄設備の設置 休憩室の設置 など |
局所排気装置 | ヒュームフード |
||
プッシュプル型換気装置 | 高封じ込めヒュームフード |
||
第2類物質 (原則右のいずれかの 発散源対策が必要です) |
発散源の密閉 | グローブボックス |
|
局所排気装置 | ヒュームフード |
||
プッシュプル型換気装置 | 高封じ込めヒュームフード |
||
発散防止抑制措置 | ダクトレスヒュームフード |
||
第3類物質 | 発散源対策設置義務なし | 漏洩防止のための措置 など |
特化則が求める安全対策措置
ここでは、特化則を8つのカテゴリーに分け、各規定の内容を解説しています。
特化則第2条では対象物質を以下の分類で区別しています。
第1類物質
労働安全衛生法第56条における製造許可の対象物であり、以下の物質のことをいいます。
物質名 | 対象となる 含有濃度(重量%) | 管理濃度 |
---|---|---|
ジクロルベンジジンおよびその塩 | 1%超 | - |
アルファ-ナフチルアミンおよびその塩 | 1%超 | - |
塩素化ビフェニル(別名PCB) | 1%超 | 0.01mg/m3 |
オルト-トリジンおよびその塩 | 1%超 | - |
ジアニシジンおよびその塩 | 1%超 | - |
ベリリウムおよびその化合物 | 1%(合金は3%)超 | ベリリウムとして 0.001mg/m3 |
ベンゾトリクロリド | 0.5%超 | - |
第2類物質
主に慢性障害の発生を防止するため、ガス、蒸気または粉じんの発散源対策として局所排気装置等の設置が必要となる物質のことをいいます。また、第2類物質は設備について講ずべき基準等の区分に応じて、「特定第2類物質」、「特別有機溶剤等」、「オーラミン等」、および「管理第2類物質」に分類されます。
特定第2類物質
第2類物質のうち、特に漏洩に留意すべき以下の物質が特定第2類物質に指定されています。
物質名 | 対象となる 含有濃度(重量%) | 管理濃度 |
---|---|---|
エチレンイミン | 1%超 | 0.05ppm |
エチレンオキシド | 1%超 | 1ppm |
塩化ビニル | 1%超 | 2ppm |
クロロメチルメチルエーテル | 1%超 | - |
酸化プロピレン | 1%超 | 2ppm |
3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン | 1%超 | 0.005mg/m3 |
ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP) | 1%超 | 0.1mg/m3 |
1,1-ジメチルヒドラジン | 1%超 | 0.01ppm |
ナフタレン | 1%超 | 10ppm |
ニッケルカルボニル | 1%超 | 0.001ppm |
パラ-ジメチルアミノアゾベンゼン | 1%超 | - |
ベータ-プロピオラクトン | 1%超 | 0.5ppm |
ベンゼン | 1%超 | 1ppm |
ホルムアルデヒド | 1%超 | 0.1ppm |
オルト-トルイジン | 1%超 | 1ppm |
アクリルアミド | 1%超 | 0.1mg/m3 |
アクリロニトリル | 1%超 | 2ppm |
塩素 | 1%超 | 0.5ppm |
シアン化水素 | 1%超 | 3ppm |
臭化メチル | 1%超 | 1ppm |
トリレンジイソシアネート | 1%超 | 0.005ppm |
パラ-ニトロクロルベンゼン | 5%超 | 0.6mg/m3 |
フッ化水素 | 5%超 | 0.5ppm |
沃化メチル | 1%超 | 2ppm |
硫化水素 | 1%超 | 1ppm |
硫酸ジメチル | 1%超 | 0.1ppm |
特別有機溶剤等
第2類物質のうち、有機溶剤中毒予防規則(以下、「有機則」)が準用される以下の物質が特別有機溶剤等に指定されています。有機則については、こちらをご参照ください。
物質名 | 対象となる 含有濃度(重量%) | 管理濃度 | 有機則における分類 |
---|---|---|---|
クロロホルム | 1%超 | 3ppm | 第1種有機溶剤 |
四塩化炭素 | 1%超 | 5ppm | 第1種有機溶剤 |
1,2-ジクロロエタン(別名二塩化エチレン) | 1%超 | 10ppm | 第1種有機溶剤 |
1,1,2,2-テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン) | 1%超 | 1ppm | 第1種有機溶剤 |
トリクロロエチレン | 1%超 | 10ppm | 第1種有機溶剤 |
エチルベンゼン | 1%超 | 20ppm | 第2種有機溶剤 |
1,4-ジオキサン | 1%超 | 10ppm | 第2種有機溶剤 |
1,2-ジクロロプロパン | 1%超 | 1ppm | 第2種有機溶剤 |
ジクロロメタン(別名二塩化メチレン) | 1%超 | 50ppm | 第2種有機溶剤 |
スチレン | 1%超 | 20ppm | 第2種有機溶剤 |
テトラクロロエチレン(パークロルエチレン) | 1%超 | 25ppm | 第2種有機溶剤 |
メチルイソブチルケトン | 1%超 | 20ppm | 第2種有機溶剤 |
特別有機溶剤等は、有機則における第1章から第3章、第4章(第19条および第19条の2を除く)および第7章の規定が準用されます。また、特別有機溶剤と有機溶剤の混合物を特定有機溶剤混合物と呼びます。そのうち、特別有機溶剤が単一成分として1%超、かつ有機溶剤との合計が重量の5%超となる混合物においては、混合物中の有機溶剤について有機則に定める作業環境測定および健康診断の実施が必要となります。
オーラミン等
第2類物質のうち、尿路系器官にがん等の腫瘍を発生するおそれのある物質がオーラミン等に指定されています。
物質名 | 対象となる 含有濃度(重量%) | 管理濃度 |
---|---|---|
オーラミン | 1%超 | - |
マゼンタ | 1%超 | - |
管理第2類物質
第2類物質のうち、特別有機溶剤等とオーラミン等以外の物質が管理第2類物質に指定されています。
物質名 | 対象となる 含有濃度(重量%) | 管理濃度 |
---|---|---|
三酸化二アンチモン | 1%超 | アンチモンとして0.1mg/m3 |
インジウム化合物 | 1%超 | - |
クロム酸およびその塩 | 1%超 | クロムとして0.05mg/m3 |
コバルトおよびその無機化合物 | 1%超 | コバルトとして0.02mg/m3 |
コールタール | 5%超 | ベンゼン可溶性成分として0.05mg/m3 |
重クロム酸およびその塩 | 1%超 | クロムとして0.05mg/m3 |
ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除き、粉状のものに限る) | 1%超 | ニッケルとして0.1mg/m3 |
砒素およびその化合物(アルシンおよび砒化ガリウムを除く) | 1%超 | 砒素として0.003mg/m3 |
リフラクトリーセラミックファイバー | 1%超 | 5μm以上の繊維として0.3本/cm3 |
アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基またはエチル基である物に限る) | 1%超 | 水銀として0.01mg/m3 |
オルト-フタロジニトリル | 1%超 | 0.01mg/m3 |
カドミウムおよびその化合物 | 1%超 | カドミウムとして0.05mg/m3 |
五酸化バナジウム | 1%超 | バナジウムとして0.05mg/m3 |
シアン化カリウム | 5%超 | シアンとして3mg/m3 |
シアン化ナトリウム | 5%超 | シアンとして3mg/m3 |
水銀およびその無機化合物(硫化水銀を除く。) | 1%超 | 水銀として0.025mg/m3 |
ニトログリコール | 1%超 | 0.05ppm |
ペンタクロルフェノール(別名PCP)およびそのナトリウム塩 | 1%超 | ペンタクロロフェノールとして0.5mg/m3 |
マンガンおよびその化合物 | 1%超 | マンガンとして0.05mg/m3(レスピラブル粒子) |
溶接ヒューム | 1%超 | マンガンとして0.05mg/m3(レスピラブル粒子) |
特別管理物質
第1類物質と第2類物質のうち、がん原性物質またはその疑いのある物質については特別管理物質に指定されており、名称・注意事項などの掲示(第38条の3)や、作業環境測定や健康診断の記録を30年間保存することが求められています。
物質名 | 対象となる 含有濃度(重量%) | 管理濃度 |
---|---|---|
ジクロルベンジジンおよびその塩 | 1%超 | - |
アルファ-ナフチルアミンおよびその塩 | 1%超 | - |
オルト-トリジンおよびその塩 | 1%超 | - |
ジアニシジンおよびその塩 | 1%超 | - |
ベリリウムおよびその化合物 | 1%(合金は3%)超 | ベリリウムとして 0.001mg/m3 |
ベンゾトリクロリド | 0.5%超 | - |
エチレンイミン | 1%超 | 0.05ppm |
エチレンオキシド | 1%超 | 1ppm |
塩化ビニル | 1%超 | 2ppm |
クロロメチルメチルエーテル | 1%超 | - |
酸化プロピレン | 1%超 | 2ppm |
3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン | 1%超 | 0.005mg/m3 |
ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP) | 1%超 | 0.1mg/m3 |
1,1-ジメチルヒドラジン | 1%超 | 0.01ppm |
ナフタレン | 1%超 | 10ppm |
ニッケルカルボニル | 1%超 | 0.001ppm |
パラ-ジメチルアミノアゾベンゼン | 1%超 | - |
ベータ-プロピオラクトン | 1%超 | 0.5ppm |
ベンゼン | 1%超 | 1ppm |
ホルムアルデヒド | 1%超 | 0.1ppm |
オルト-トルイジン | 1%超 | 1ppm |
エチルベンゼン | 1%超 | 20ppm |
クロロホルム | 1%超 | 3ppm |
四塩化炭素 | 1%超 | 5ppm |
1,4-ジオキサン | 1%超 | 10ppm |
1,2-ジクロロエタン(別名二塩化エチレン) | 1%超 | 10ppm |
1,2-ジクロロプロパン | 1%超 | 1ppm |
ジクロロメタン(別名二塩化メチレン) | 1%超 | 50ppm |
スチレン | 1%超 | 20ppm |
1,1,2,2-テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン) | 1%超 | 1ppm |
テトラクロロエチレン(パークロルエチレン) | 1%超 | 25ppm |
トリクロロエチレン | 1%超 | 10ppm |
メチルイソブチルケトン | 1%超 | 20ppm |
オーラミン | 1%超 | - |
マゼンタ | 1%超 | - |
三酸化二アンチモン | 1%超 | アンチモンとして0.1mg/m3 |
インジウム化合物 | 1%超 | - |
クロム酸およびその塩 | 1%超 | クロムとして0.05mg/m3 |
コバルトおよびその無機化合物 | 1%超 | コバルトとして0.02mg/m3 |
コールタール | 5%超 | ベンゼン可溶性成分として0.05mg/m3 |
重クロム酸およびその塩 | 1%超 | クロムとして0.05mg/m3 |
ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除き、粉状のものに限る) | 1%超 | ニッケルとして0.1mg/m3 |
砒素およびその化合物(アルシンおよび砒化ガリウムを除く) | 1%超 | 砒素として0.003mg/m3 |
リフラクトリーセラミックファイバー | 1%超 | 5μm以上の繊維として0.3本/cm3 |
第3類物質
大量漏洩により急性中毒を引き起こすおそれのある以下の物質のことをいいます。
物質名 | 対象となる 含有濃度(重量%) | 管理濃度 |
---|---|---|
アンモニア | 1%超 | - |
一酸化炭素 | 1%超 | - |
塩化水素 | 1%超 | - |
硝酸 | 1%超 | - |
二酸化硫黄 | 1%超 | - |
フェノール | 1%超 | - |
ホスゲン | 1%超 | - |
硫酸 | 1%超 | - |
特化則には特定の物質を用いた特定の作業を行う場合に限り、その適用が除外されることがあります。また、特別有機溶剤等については、準用される有機則における適用除外を利用することも可能です。
特化則の適用除外(第2条の2)
特別有機溶剤等、コバルト等、酸化プロピレン等、DDVP等に係る作業のうち、労働者の曝露による健康障害のおそれが低いと判断された作業(具体的には特化則第2条の2をご参照ください)については、特化則における規定(保護具(第44条・第45条)を除く)の適用が除外されます。ただし、特別有機溶剤等のうち発がんのおそれのあるクロロホルム他9物質(クロロホルム・四塩化炭素・1,4-ジオキサン・1,2-ジクロロエタン・ジクロロメタン・スチレン・1,1,2,2-テトラクロロエタン・テトラクロロエチレン・トリクロロエチレン・メチルイソブチルケトン)については、特化則の適用が除外される業務であっても、「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針」において、曝露を低減するための措置、作業環境測定や労働衛生教育の実施、労働者の把握、危険有害性等の作業場への掲示等事業者が講すべき措置が示されています。
有機則の準用における適用除外(第38条の8)
特別有機溶剤等に準用される有機則には、適用除外の規定を定めた有機則第2条、第3条、第4条も含まれるため、①通風が十分な屋内作業場では1時間当たりの消費量、②タンク等の内部など通風が不十分な屋内作業場*では1日当たりの消費量が、下記の許容消費量(W)を超えないとき、適用除外を受けることができます。ただし、あくまで適用除外となるのは、有機則に準用される規定のみで、特化則で定める規定(作業主任者の選任、作業環境測定の実施、健康診断の実施、洗浄設備の設置、名称等の掲示、作業記録の作成、事業廃止の報告)については適用除外とはならないため、注意が必要です。
*通風が不十分な屋内作業場とは、天井、床および周壁の総面積に対する、直接外気に向かって開放されている窓その他の開口部の面積の比率(開口率)が3%以下の屋内作業場のことをいいます。
消費する有機溶剤の区分 | 有機溶剤等の許容消費量 |
---|---|
第1種有機溶剤等 | W=(1/15) x A |
第2種有機溶剤等 | W=(2/5) x A |
第3種有機溶剤等 | W=(3/2) x A |
A:作業場の気積(m3(立方メートル))(床面から4mを超える高さにある空間を除く)ただし、気積が150m3(立方メートル)を超える場合は、150m3(立方メートル)とする。
「消費量」とは使用する量ではなく、蒸発する量のことをいいます。使用前と使用後の差分を消費量とするのが最もシンプルな算出方法です。適用除外には有機則第2条で定めるものと有機則第3条で定めるものの2種類あり、それぞれ適用除外の判断をするものと、除外される項目が異なります。
有機則第2条における適用除外(有機則第2条)
有機則第2条における適用除外は、事業者が適用除外に該当するかどうか判断します。適用除外と判断した場合には、前述の特化則に定める規定を除き、局所排気装置などの発散源対策の設置等が不要になります。
有機則第3条における適用除外(第3条)
第3条における適用除外は、所轄労働基準監督署長の判断に基づき行われます。事業者は規定の書類と作業場の見取図を添えて、所轄労働基準監督署長に提出します。認定された場合、第2条における適用除外項目に加えて、特定有機溶剤混合物であって、単一成分として1%超の特別有機溶剤と有機溶剤の合計が5%超の場合には、含有する有機溶剤に係る作業環境測定と健康診断も不要となります。(特別有機溶剤に係る作業環境測定と健康診断の実施は必要です)
対象物質と作業場に応じて、適切な発散源対策設備の設置が義務付けられています。
第2類物質(オーラミン等を除く)を取り扱う作業場(第5条・第38条の3)
特定第2類物質または管理第2類物質のガス、蒸気または粉じんが発散する屋内作業場には、「ガス、蒸気または粉じんの発生源を密閉する設備」、「局所排気装置またはプッシュプル型換気装置」、「発散防止抑制措置」のいずれかを設けなければなりません。また、特別有機溶剤等においても、有機則第5条が準用されるため、同様の設備が必要です。
- ガス、蒸気または粉じんの発生源を密閉する設備(密閉設備)
この設備の構造等についての規定は定められておらず、有機溶剤の蒸気を作業場内に発散させない機能をもつものであればよいとされています。
- 局所排気装置またはプッシュプル型換気装置
局所排気装置とは有害物の発散源に近いところにフードを設けて、有害物を吸込み、ダクトを通して屋外に排気する装置をいいます。また、プッシュプル型換気装置とは、一様な捕捉気流を形成させ、吸込み側にー度に取り込んで排出する装置をいいます。局所排気装置の代表的なものとしてはヒュームフード、プッシュプル型換気装置の代表的なものとしては、給気(プッシュ)気流を生み出すサポートファンを備えた省エネ効果が高い高封じ込めヒュームフードがあります。この他にも、当社では作業内容に合わせたオーダーメイドのプッシュプル型換気装置の提案も行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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平成24年より設けられた特例許可申請制度。本制度のもとに所轄労働基準監督署長の許可を得ると、例外措置として、上記以外の設備で第2類物質を取り扱うことができます。 発散防止抑制措置に該当する設備の代表例が、ダクトレスヒュームフードです。ダクトレスヒュームフードは活性炭フィルターによって、有機溶剤を吸着・除去し、クリーンなエアーを室内に循環させる装置です。従来の局所排気装置またはプッシュプル型換気装置と異なり、屋外に排気口を設ける必要がないため、ダクト工事が不要で設置してコンセントにつなげるだけで使用可能です。
発散防止抑制措置として所轄労働基準監督署長の許可を得るためには、作業環境測定を実施し、結果が第一管理区分であることなど様々な条件があります。 当社ではダクトレスヒュームフードを販売するだけでなく、導入前のコンサルティングから、作業環境測定・各種申請書類の作成まで、お客様の申請作業をトータルにサポートするサービスをご提案しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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ただし、設置が著しく困難なとき*、または臨時の作業を行うとき**に限り、全体換気装置を設け、当該物質を湿潤な状態にする、適切な保護具を着用する等の労働者の健康障害を予防するために必要な措置を講じることで、これらの設備を設置しないことが認められています。
*「設置が著しく困難なとき」については、通達により次のケースが示されています。
**「臨時の作業」とは、単に時間が短いことを言うのでなく、本来の業務以外に発生するような作業のことを意味します。
第2類物質またはオーラミン等の製造等(第4条)
特定第2類物質またはオーラミン等(以下特定第2類物質等)を製造する設備は密閉式の構造としなければなりません。また、該当物質を湿潤化した場合を除き、該当設備の操作は遠隔から行わなければなりません。
製造した特定第2類物質等を計量し、容器に入れ、または袋詰めする作業を行う場合において、対象物質を湿潤化するもしくは遠隔操作を行うことが困難である場合は、作業中の労働者の身体に直接接触しない方法により行い、かつ囲い式フード*の局所排気装置またはプッシュプル型換気装置を設ける必要があります。
*:「囲い式フード」とは、作業に支障のない範囲でできる限り発散源を覆うようにし、その開口部をできるだけ狭くした形式のフードを指します。
第4条または第5条の適用除外規定(第6条)
所轄労働基準監督署長の認定を受けることによって、第4条・第5条が規定する設備を設置しないことが認められています。認定を受けるには、作業場の空気中における第2類物質のガス、蒸気または粉じんの濃度が常態として有害な程度になるおそれがないことが条件として定められています。具体的な基準については、こちらをご参照ください。
第1類物質の取り扱い(第3条)
第1類物質を取り扱う(容器への出し入れ、反応槽へ投入する作業を指す)作業場とベリリウム等を加工する作業場には、「第1類物質のガス、蒸気もしくは粉じんの発生源を密閉する設備」、「囲い式フード*の局所排気装置またはプッシュプル型換気装置」のいずれかを設けなければなりません。ただし、塩化ビフェニル等を容器へ出し入れする場合で、当該作業場に局所排気装置を設けたときは、発散源を密閉する設備、囲い式フードの局所排気装置またはプッシュプル型換気装置を設ける必要はありません。
設備の分類 | 密閉設備 | 局所排気装置 | プッシュプル型換気装置 | 発散防止抑制措置 |
---|---|---|---|---|
設備の例 | ||||
グローブボックス | ヒュームフード | 高封じ込めヒュームフード | ダクトレスヒュームフード | |
第1類物質 | 〇 | 〇* | 〇* | ✕ |
第2類物質** | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
第3類物質 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 |
*:局所排気装置・プッシュプル型換気装置は原則囲い式フードのみ
**:製造作業場とオーラミン等の製造・取り扱いを除く
第1類物質、第2類物質その他、特に問題がある物質について、局所排気装置等から排出されたこれらの物質のガス、蒸気または粉じんによる作業場の再汚染や近辺環境の汚染を防ぐための措置が定められています。
除じん設備の設置(第9条)
第2類物質の粉じんを含有する気体を排出する製造設備の排気筒または、第1類物質または第2類物質の粉じんを含有する気体を排出する局所排気装置もしくはプッシュプル型換気装置には、粒形に応じて、以下の表に掲げるいずれかの除じん方式による除じん装置またはこれらと同等以上の性能を有する除じん装置を設けなければいけません。
粉じんの粒径 (単位:マイクロメートル) |
除じん方式 |
---|---|
5未満 | ろ過除じん方式 電気除じん方式 |
5以上20未満 | スクラバによる除じん方式 ろ過除じん方式 電気除じん方式 |
20以上 | マルチサイクロン(処理風量が毎分20立方メートル以内ごとに1つのサイクロンを設けたものをいう。)による除じん方式 スクラバによる除じん方式 ろ過除じん方式 電気除じん方式 |
この表における粉じんの粒径は、重量法で測定した粒径分布において最大頻度を示す粒径をいう。 |
ここでの各除じん方式については、通達により以下のように定義が定められています。
- ろ過除じん方式
ろ層に含じん気体を通して、粉じんをろ過捕集する原理によるもの。
- 電気除じん方式
高電圧の直流のコロナ放電を利用して、粉じんを荷電し、電気的引力により捕集する原理によるもの。
- スクラバによる除じん方式
水等の液体を噴射または起泡し、含じん気体中の粉じんを加湿凝集させて捕集する原理によるもの。
- マルチサイクロンによる除じん方式
2個以上のサイクロン(含じん気体を円筒内で旋回させ、その遠心力で外方に分離される粉じんを落下させるもの)を並列に接続したものであり、サイクロン系としては高性能を有するもの。サイクロンは1個のみからなる単体サイクロンはこれに含まれません。
また、除じん装置の効果を最大限に発揮するために、必要に応じて粒径の大きい除じんを除去するための前置き除じん装置を設けることが定められています。
当社ではお客様に最適な除じん装置の提案を行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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排ガス処理装置の設置(第10条)
以下の物質のガスまたは蒸気を含有する気体を排出する製造設備の排気筒または、局所排気装置もしくはプッシュプル型換気装置には、各物質に応じたいずれかの方式による排ガス処理装置またはこれらと同等以上の性能を有する排ガス処理装置を設けなければいけません。
物質 | 処理方式 |
---|---|
アクロレイン | 吸収方式 直接燃焼方式 |
フッ化水素 | 吸収方式 吸着方式 |
硫化水素 | 吸収方式 酸化・還元方式 |
硫酸ジメチル | 吸収方式 直接燃焼方式 |
ここでの各排ガス処理方式については、通達により以下のように定義が定められています。
- 吸収方式
充てん塔、段塔等を用い対象物質に適応した吸収液によってガスまたは蒸気を吸収処理する方式。
- 直接燃焼方式
高濃度の可燃性のガスの場合は、そのまま完全燃焼させ、低濃度の可燃性のガスの場合は、燃料を加えまたは燃焼器の火炎をあてて完全燃焼させる方式。
- 吸着方式
例えばフッ化水素を活性アルミナに吸着させる方式。
- 酸化・還元方式
必要な酸化剤または還元剤を用いて排ガス中の対象物質を反応分離する方式。
排ガスについては、特化則以外でも大気汚染防止法や悪臭防止法などの法令や各都道府県の条例により規制されており、その規制に対応する性能を備えた排ガス処理装置の設置が義務付けられている場合があるので、注意が必要です。
当社ではお客様に最適な排ガス処理装置の提案を行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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排液処理装置の設置(第11条)
以下の物質を含有する排液(第1類物質を製造する設備からの排液を除く)については、各物質に応じたいずれかの方式による排液処理装置またはこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければいけません。
物質 | 処理方式 |
---|---|
アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基またはエチル基であるものに限る) | 酸化・還元方式 |
塩酸 | 中和方式 |
硝酸 | 中和方式 |
シアン化カリウム | 酸化・還元方式 活性汚泥方式 |
シアン化ナトリウム | 酸化・還元方式 活性汚泥方式 |
ペンタクロルフェノール(別名PCP)およびそのナトリウム塩 | 凝集沈でん方式 |
硫酸 | 中和方式 |
硫化ナトリウム | 酸化・還元方式 |
ここでの各排液処理方式については、通達により以下のように定義が定められています。
- 酸化・還元方式
必要な酸化剤または還元剤を用いて排液中の対象物質を反応分離する方式。
- 中和方式
排液中の対象物質に適応した中和剤を用いて、排液を中和処理する方式。
- 活性汚泥方式
排液中の非沈殿性浮遊物および溶解性物質を微生物の働きによって、吸着、凝集および酸化を行わせ、ガスおよび沈殿しやすい汚泥に変えてこの汚泥を分離する方式。
- 凝集沈殿方式
排液中の対象物質に適応した界面活性剤その他の凝集剤を用いて、排液中の対象物質を凝集させて沈殿させ除去する方式。
また、当該処理装置に通じる排水溝もしくはピットについて、塩酸、硝酸または硫酸を含有する排液とシアン化カリウムもしくはシアン化ナトリウムまたは硫化ナトリウムを含有する排液とが混合することにより、シアン化水素または硫化水素が発生するおそれのあるときは、これらの排液が混合しないように、異なる排水溝もしくはピットを設けなければなりません。
残さい物の処理(第12条)
アルキル水銀化合物の製造装置や容器の清掃等に用いた同物質を含有する残さい物は、分解、焙焼処理、コンクリート固型化等により除毒してから廃棄しなければなりません。
ぼろ等の処理(第12条の2)
特定化学物質に汚染されたぼろ、紙くず等については、ふたまたは栓をした不浸透性の容器に納めておく等の措置を講じなければなりません。
ここでは主に特定化学設備等からの漏洩を防止するための規定をまとめています。特定化学設備とは、特定第2類物質または第3類物質を製造または取り扱う設備で移動式以外の設備およびその付属設備のことをいい、pH調整装置等が該当します。
腐食・接合部の漏洩防止措置(第13,14条)
特定化学設備(特定化学設備のバルブまたはコックを除く)のうち特定第2類物質または第3類物質(以下、このカテゴリーでは「第3類物質等」とする)が接触する部分は当該物質の種類、温度、濃度等に応じて腐食しにくい材料で造り、内張りを施す等の措置を講じなければなりません。また、ふた板、フランジ、バルブ、コック等の接合部については、ガスケットを使用して接合面を相互に密接させる等の措置を講じなければなりません。
バルブ等の開閉方向の表示・材質等(第15,16条)
特定化学設備のバルブ、コック、スイッチ、押しボタン等については、開閉の方向の表示、色分け・形状の区分等を行い、バルブまたはコックの材料は耐久性のあるものである必要があります。また、ストレーナ等の開放部分に対して、特定化学設備の内部にある第3類物質等が常に二重にロックされるようにバルブまたはコックを配置しなければなりません。ただし、バルブまたはコックが確実に閉止していることを確認できる装置(ストレーナ等に直結する配管内への危険物の流入を検知し得る圧力計など)を設けるときはこの限りではありません。
送給原材料等の表示(第17条)
特定化学設備に原材料等を送給する労働者が見えやすい位置に当該原材料等の種類、当該送給の対象となる設備その他必要な事項を表示しなければなりません。ここでの「材料」とは、反応の促進、不活性化等に用いられる触媒、空気、水蒸気、水、ガス等が含まれます。
出入口・計測装置の設置(第18条・第18条の2)
特定化学設備を設置する屋内作業場および当該作業場を有する建築物の避難階には、当該特定化学設備から漏洩があった場合に、容易に地上の安全な場所に避難するための2つ以上の出入口を設けなければなりません。避難階以外の階については、その階から避難階または地上に通ずる2つ以上の直通階段または傾斜路が必要で、これらのうちの1つについては、すべり台、避難用はしご、避難用タラップ等の避難用器具で代用することができます。直通階段もしくは傾斜路のうちの1つは、屋外に設ける必要がありますが、すべり台、避難用はしご、避難用タラップ等の避難用器具がある場合は、この限りではありません。
特定化学設備のうち発熱反応が行われる反応槽等で、異常化学反応等により大量漏洩するおそれのあるもの(以下、「管理特定化学設備」という)については、異常化学反応等の発生を早期に把握するために必要な温度計、流量計、圧力計などの計測装置を設けなければなりません。
警報設備・緊急遮断装置・予備動力源等(第19条・第19条の2・第19条の3)
特定化学設備の有無に関わらず、第3類物質等を合計100リットル以上用いる作業場では、当該物質が漏洩した場合にその除害に必要な薬剤または器具等の設備を備えなければなりません。(除害方法については、こちらで例示されています。)また、管理特定化学設備には、異常化学反応等の発生を知らせる自動警報装置を設置する(設置が難しい場合は、監視人を置く)必要があります。
管理特定化学設備からの漏洩時には、原材料の送給を遮断し、または製品等(中間製品、原材料および異常化学反応等により生成したガス等)を放出するための装置、不活性ガス、冷却用水等を送給するための装置等異常化学反応等に対処するための装置を設けなければなりません。この装置に設けるバルブまたはコックについては、確実に作動し、安全かつ正確に操作することのできるものであり、また常に円滑に作動できるような状態に保持する必要があります。「製品等を放出するための装置」には脱圧装置等が含まれますが、密閉式の構造もしくは放出される特定化学物資を安全に処理することができる構造のものである必要があります。
管理特定化学設備、その配管また付属設備には、予備動力源を用意し、バルブ、コック、スイッチ等については、誤操作を防止するため、施錠、色分け、形状の区分等を行う必要があります。
作業規定(第20条)
特定化学設備またはその付属設備を使用して作業を行うときは、次の事項について漏洩を防止するため必要な規定を定め、これにより作業を行わなければなりません。
- バルブ、コック等(特定化学設備に原材料を送給するとき、および特定化学設備から製品等を取り出すときに使用されるものに限る)の操作
- 冷却装置、加熱装置、攪拌装置および圧縮装置の操作
- 計測装置および制御装置の監視および調整
- 安全弁、緊急遮断装置その他の安全装置および自動警報装置の調整
- ふた板、フランジ、バルブ、コック等の接合部における第3類物質等の漏洩の有無の点検
- 試料の採取
- 管理特定化学設備にあっては、その運転が一時的または部分的に中断された場合の運転中断および運転再開時における作業の方法
- 異常な事態が発生した場合における応急の措置
- 前各号に掲げるもののほか、第3類物質等の漏洩を防止するために必要な措置
床の材質(第21条)
第1類物質を取り扱う作業場(第1類物質を製造する事業場において当該第1類物質を取り扱う作業場を除く)、オーラミン等または管理第2類物質を製造し、または取り扱う作業場および特定化学設備を設置する屋内作業場の床は不浸透性の材料で造らなければなりません。不浸透性の材料には、コンクリート、陶製タイル、合成樹脂の床材、鉄板等が挙げられます。
救護組織等(第26条)
特定化学設備を設置する作業場については、第3類物質等は漏洩したときに備え、救護組織の確立、関係者の訓練等に努めなければなりません。
作業主任者の選定や設備の点検義務など事業者が管理すべき項目が定められています。
特定化学物質作業主任者の選定(第27,28条)
特定化学物質を製造し、または取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業を除く)を行う場合、特定化学物質および四アルキル鉛等作業主任者講習を修了した者から作業主任者を選任します。ただし、エチルベンゼン塗装業務、1,2-ジクロロプロパン洗浄・払拭業務、クロロホルム他9物質を用いる有機溶剤業務については、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者から作業主任者を選任する必要があります。事業者は作業主任者に次の事項を行わせなければなりません。
- 作業の方法を決定し、労働者を指揮
- 1月以内ごとに1回、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置の点検を実施
- 保護具の使用状況の監視
- タンク等の内部での特別有機溶剤業務の作業に係る措置(有機則第26条各号)の監視
定期自主検査(第29,30,31,32,33,34,35条)
特化則において、点検を行うべき設備として、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置、特定化学設備が定められています。
このうち、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置については、事業者は1年以内ごとに1回定期自主検査を行う必要があります。各設備ごとに点検項目が規定されています。自主検査であるため、資格者が実施する必要はありませんが、一定の知識を有した者が行うことが望ましいです。当社では経験豊富なプロフェッショナルによる定期点検を含む保守契約サービスをご案内しております。
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特定化学設備およびその附属設備については、事業者は2年以内ごとに1回定期自主検査を行う必要があります。その他設備と同様特定化学設備についても、点検項目が規定されています。
実施したこれらの定期自主検査の記録は3年間保存しなければなりません。また、初めて装置を使用するとき、分解・改造・修理を行ったときにも同様の検査を行う必要があります。検査で異常が認められたときには、直ちに補修しなければなりません。
掲示(第38条の3)
特別管理物質を製造、または取り扱う作業場には、次の事項を労働者が容易に知ることができるよう、見やすい場所に掲示しなければなりません。
- 特別管理物質の名称
- 特別管理物質の人体に及ぼす作用
- 特別管理物質の取り扱い上の注意事項
- 使用すべき保護具
掲示方法は、「有機溶剤中毒予防規則第二十四条第一項の規定により掲示すべき事項の内容および掲示方法を定める告示」(昭和47年労働省告示第123号)第4号の規定に準ずるものとされています。
作業の記録(第38条の4)
特別管理物質を製造、または取り扱う作業場に従事する労働者について、1月を超えない期間ごとに次の事項を記録し、30年間保存しなければなりません。
- 労働者の氏名
- 従事した作業の概要および当該作業に従事した期間
- 特別管理物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要および事業者が講じた応急の措置の概要
特殊な作業等の管理(第38条の5~20)
ここでは、塩素化ビフェニル等、インジウム化合物等、特別有機溶剤等、エチレンオキシド等、コバルト等、三酸化二アンチモン等、ニトログリコール、ベンゼン等、1,3-ブタジエン等、硫酸ジエチル等、1,3-プロパンスルトン等、リフラクトリーセラミックファイバー等を製造または取扱う作業、コークス炉作業、燻蒸作業に従事する労働者の健康障害を防止するため、それぞれ必要な措置を講ずべきことを規定しています。各措置の詳細については、特化則原文をご参照ください。
設備の改造等の作業(第22条,22条の2)
特定化学物質を製造、取扱い、もしくは貯蔵する設備または特定化学物質を発生させるものを入れたタンク等で、当該特定化学物質が滞留するおそれのあるものの改造、修理、清掃等で、これらの設備を分解する作業またはこれらの設備の内部に立ち入る作業(酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)第2条第8号の第2種酸素欠乏危険作業および酸欠則第25条の2の作業に該当するものを除く)を行うときは次の措置を講じなければなりません。
- 作業の方法・順序を決定し、あらかじめこれを従事する労働者に周知
- 特定化学物質による労働者の健康障害の予防について必要な知識を有する者を指揮者に選任し、当該作業を指揮させる
- 作業を行う設備から特定化学物質を確実に排出し、かつ当該設備に接続しているすべての配管から作業箇所に特定化学物質が流入しないようバルブ、コック等を二重に閉止し、またはバルブ、コック等を閉止するとともに閉止板等を施す
- 前号により閉止したバルブ、コック等または施した閉止板等には、施錠し、これらを開放してはならない旨を見やすい箇所に表示し、または監視人を置く
- 作業を行う設備の開口部で、特定化学物質が当該設備に流入するおそれのないものをすべて開放する
- 換気装置により、作業を行う設備の内部を十分に換気する
- 測定その他の方法により、作業を行う設備の内部について、特定化学物質により労働者が健康障害を受けるおそれのないことを確認する
- 第3号により施した閉止板等を取り外す場合において、特定化学物質が流出するおそれのあるときは、あらかじめ、当該閉止板等とそれに最も近接したバルブ、コック等との間の特定化学物質の有無を確認し、必要な措置を講ずる
- 非常時に直ちに作業を行う設備の内部の労働者を退避させるための設備、器具等を整備しておく
- 作業に従事する労働者に不浸透性の保護衣、保護手袋、保護長靴、呼吸用保護具等必要な保護具を使用させる
上記作業において、当該設備の溶断、研磨等により特定化学物質を発生させるおそれのあるときは、次の措置を講じなければなりません。
- 作業の方法・順序を決定し、あらかじめこれを従事する労働者に周知
- 特定化学物質による労働者の健康障害の予防について必要な知識を有する者を指揮者に選任し、当該作業を指揮させる
- 作業を行う設備の開口部で、特定化学物質が当該設備に流入するおそれのないことものをすべて開放する
- 換気装置により、作業を行う設備の内部を十分に換気する
- 非常時に直ちに作業を行う設備の内部の労働者を退避させるための設備、器具等を整備しておく
- 作業に従事する労働者に不浸透性の保護衣、保護手袋、保護長靴、呼吸用保護具等必要な保護具を使用させる
退避等(第23条)
第3類物質等が漏洩した場合において労働者が健康障害を受けるおそれのあるときは、労働者を作業場等から退避させなければなりません。また、健康障害を受けるおそれのないことを確認するまでの間、作業場等に関係者以外のものが立ち入ることを禁止し、かつその旨を見やすい箇所に表示しなければなりません。
立ち入り禁止措置(第24条)
次の作業場には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつその旨を見やすい箇所に表示しなけれななりません。
- 第1類物質または第2類物質(特別有機溶剤等を除く)を製造し、または取扱う作業場(臭化メチル等を用いて燻蒸作業を行う作業場を除く)
- 特定化学設備を設置する作業場または特定化学設備を設置する作業場以外の作業場で第3類物質等を合計100リットル以上取り扱う作業場
特定化学物質の貯蔵(第25条)
特定化学物質を運搬し、または貯蔵するときは、堅固な容器を使用して確実な包装をし、その容器または包装に当該物質の名称と取り扱い上の注意事項を表示しなければなりません。また、これらの容器または包装は、当該物質が発散しないような措置を講じ、保管するときは一定の場所を定めなければなりません。
特別有機溶剤等を屋内に貯蔵する場合は、その貯蔵場所に関係者以外が立ち入ることを禁止する設備と該当物質の蒸気を屋外に排出する設備を設けなければなりません。「屋外に排出する設備」とは、窓、排気管等をいい、必ずしも動力により蒸気を排出する必要はありません。
有機則と同じく、特化則にも定期的な作業環境測定の実施義務が定められています。
作業環境測定の実施と評価(第36条,36条の2,3,4)
第1類、第2類物質を使用する屋内作業場では、作業場におけるこれらガス、蒸気または粉じんの気中濃度を測定する作業環境測定を6月以内ごとに1回実施する必要があります。測定は作業環境測定士が実施し、その報告書は3年間保存しなければなりません。ただし、特別管理物質に関しては、結果を30年間保存する必要があります。作業環境測定の結果は下記の3つに区分されます。
特定有機溶剤混合物に係る測定等(第36条の5)
特定有機溶剤混合物のうち、特別有機溶剤の重量%が1%超かつ有機溶剤との含有量の合計が5%超のものについては、第36条における特別有機溶剤の測定のほか、有機則第28条(第1項を除く)から第28条の4に則り、含有する有機溶剤の空気中濃度の測定を行わなければなりません。
当社では、作業環境測定士による作業環境測定の実施だけでなく、その評価結果に基づいた改善コンサルティングも行っています。
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労働者の健康障害を予防するために、事業者には様々な対策が求められています。
休憩室の設置(第37条)
第1類物質または第2類物質(特別有機溶剤等を除く)を常時製造または取り扱う作業に労働者を従事させるときは、当該作業を行う作業場以外の場所に休憩室を設置しなければなりません。労働者は作業衣等に付着したものを除去してから休憩室に入る必要があります。また、製造または取り扱う物質が粉状である場合は、休憩室に次の措置を講じなければなりません。
- 入口には水を流しまたは十分湿らせたマットを置く等労働者の足部に付着したものを除去するための設備を設けること
- 入口には衣服用ブラシを備えること
- 床は真空掃除機を使用して、または水栓によって容易に掃除できる構造(水が流れやすいよう傾斜をつけ、溝を設け、かつ平滑にした不浸透性の構造等)のものとし、毎日1回以上掃除すること
洗浄設備の設置(第38条)
第1類物質または第2類物質を製造または取り扱う作業場に洗眼、洗身またはうがいの設備、更衣設備および洗濯のための設備を設け、労働者が汚染されたときは、速やかに身体を洗浄させ、汚染を除去させなければなりません。洗浄設備として代表的なものにアイシャワー・緊急シャワーがあります。
喫煙等の禁止(第38条の2)
第1類物質または第2類物質(特別有機溶剤等を除く)を製造または取り扱う作業場で労働者が喫煙し、または飲食することを禁止し、かつその旨を当該作業場の見やすい箇所に表示しなければなりません。
健康診断の実施(第39条)
第1類物質、第2類物質を製造または取り扱う業務に常時従事する労働者に対し、6月以内ごとに1回健康診断を行わなければなりません。健康診断項目は物質毎に特化則別表第3、第4に定められています。
健康診断の結果の記録(第40条)
実施した健康診断の結果に基づき、特定化学物質健康診断個人票(様式第2号)を作成し、これを5年間(特別管理物質の場合は30年間)保存しなければなりません。
健康診断の結果についての医師からの意見聴取(第40条の2)
実施した結果に基づき、労働安全衛生法第66条の4の規定による医師からの意見聴取が必要な場合は、健康診断の実施日から3月以内に行わなければなりません。
健康診断の結果の通知(第40条の3)
健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく当該健康診断の結果を通知しなければなりません。
健康診断の結果の報告(第41条)
健康診断を行ったときは、遅滞なく、特定化学物質健康診断結果報告書(様式第3号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
特定有機溶剤混合物に係る健康診断(第41条の2)
特定有機溶剤混合物に係る業務については、有機則第29条(第1項、第3項および第4項を除く)から第30条の3までおよび第31条の規定に基づき健康診断を行う必要があります。したがって、これらの物質の健康診断を行った際は、有機溶剤等健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。
緊急診断(第42条)
特定化学物質および特別有機溶剤等が漏洩し、労働者が汚染され、または吸引したときは、遅滞なく当該労働者に医師による診察または処置を受けさせなければなりません。
呼吸用保護具の着用(第43条)
特定化学物質を製造または取り扱う作業場には当該物質のガス、蒸気または粉じんを吸入することで労働者の健康障害を予防するために必要な呼吸用保護具を備えなければなりません。ここでいう「呼吸用保護具」とは、送気マスク等給気式呼吸用保護具(簡易救命器および酸素発生式自己救命器を除く)、防毒マスク、防じんマスクならびに面体形およびルーズフィット形の電動ファン付き呼吸用保護具をいい、これらのうち防じんマスクおよび防毒マスクであって、ハロゲンガス用、有機ガス用。一酸化炭素用、アンモニア用、亜硫酸ガス用および亜硫酸・硫黄用のものならびに電動ファン付き呼吸用保護具については、国家検定に合格したものをいいます。
保護衣等の使用(第44条)
特定化学物質で皮膚に障害を与え、もしくは皮膚から吸収されることにより障害をおこすおそれのあるものを製造または取り扱う作業場には、不浸透性の保護衣、保護手袋および保護長靴ならびに塗布材を備え付けなければなりません。なかでも、以下の物質を用いる作業に従事、もしくは周辺で同作業が行われる場合は、備え付けるだけでなく、労働者に保護眼鏡並びに不浸透性の保護衣、保護手袋および保護長靴を着用させる必要があります。
- [第1類物質]
- ジクロルベンジジンおよびその塩、塩素化ビフェニル(別名PCB)、オルト-トリジンおよびその塩、ベリリウムおよびその化合物、ベンゾトリクロリド
- [第2類物質]
- アクリルアミド、アクリロニトリル、アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基またはエチル基であるものに限る)、エチレンイミン、オルト-トルイジン、オルト-フタジニトリル、クロロホルム、シアン化カリウム、シアン化水素、シアン化ナトリウム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)、ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)、1,1-ジメチルヒドラジン、臭化メチル、水銀およびその無機化合物(硫化水銀を除く)、スチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)、トリレンジイソシアネート、ナフタレン、ニトログリコール、パラ-ニトロクロロベンゼン、フッ化水素、ベンゼン、ペンタクロロフェノール(別名PCP)、シクロペンタジエニルトリカルボニルマンガンまたは2-メチルシクロペンタジエニルトリカルボニルマンガン、沃化メチル、硫酸ジメチル
保護具の数(第45条)
第43条、第44条で定める保護具を同時に就業する労働者の人数と同数以上に備えて、常時有効(性能に支障をきたしている状態のないこと)かつ清潔に保持しなければなりません。
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